日本航空(JAL)が、2010年に会社更生法の適用を申請し倒産に至るまでの経緯と、再上場に漕ぎ着けるまでの再建の様子が詳細に記されている。

とりわけ、破綻の三年以上前から当社の悪質な経理処理を見抜き、実質的な破綻状態にあることをスクープ(著者はこの状態を『隠れ破綻』と名付けた)してきた著者だけに、
JALの経営陣が放漫経営のツケを隠蔽してきた「お化粧」の手法が、非常に分かりやすく解説されている。

JALは、「退職金の積立不足分」と「航空機等のリース料」という巨大な負債をバランスシートに計上せず、簿外で処理することによって、実態よりも債務が少なく、健全な経営に見せていた。
日本の会計原則上、この二点は例外的な簿外注記が認められており、100%バランスシートに取り込むことが義務付けられていないため、直ちにルール違反とは言えないものの、これによって実質的な経営破綻状態が覆い隠されていたことは事実であった。

加えて、筆者も〈目に余るJALの利益操作の中でも群を抜いて悪質であり、本来、違法行為として追求されるべき最大の汚点〉と評する通り、最も驚いたのは、「機材関連報奨額」の処理手法である。

「機材関連報償額」とは、リベートとも呼ばれ、JALが航空機メーカーから航空機部品を買った時に受け取るキックバックを指す。
支払った購入価格のうち、「機材関連報償額」分は戻ってくるのだから、通常の感覚で考えれば、
「購入価格 ー 機材関連報償額(=実際の取得価額)」を資産の部に「航空機(部品)」として計上して、年度に応じて償却していくのが自然であり、実際、会計原則上そのように処理されている。

しかしながらJALは、「機材関連報償額」を航空機部品の購入とは切り離し、リベートそれ自体を営業外収益に計上し、資産の部の「航空機(部品)」には割引き前の購入価格をそのまま計上していたというのである。

この利益操作は、架空の利益を産み出すばかりではなく、「航空機(部品)」の簿価が実態以上に膨らむで、後の償却負担を重くする。さらに、市場価格からかけ離れた簿価は、売却損の発生に繋がるために、機材の更新で後れを取る結果をももたらしかねない。

このような手法が、二度にわたって計十年間、続けられていた。


経営破綻状態が公になってからは、JALの再建に向けての取り組みは、ことごとく政権交代に振り回されることとなる。
それぞれの思惑はあり、他の立場から言及したものも踏まえて判断すべきだとは思うものの、
とかく昨年の総選挙で野党再編を目指したものの結果として民進党の分裂を招いた前原誠司氏のドタバタ劇は、JALの再建に際しても繰り広げられていたようにみえた。
赤字をひた隠しにする経営陣に対して以上に、企業を「政争の具」に用い続ける政治権力に対して、麻痺の度合いが尋常ではないと感じる。


会計知識に乏しい私でも、すらすらと読み進めることができた。経済活動を学ぶ良い一冊だと思う。
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