2018/10/26 町田徹のふかぼり! ラジオNIKKEI第1

トランプ政権の審判まであと11日 中間選挙の最新情勢は?



みなさんもご存知の通り、再来週火曜日、11月6日に行われるアメリカ議会の中間選挙の投開票まで残り11日となりました。

8月10日の放送でもお伝えしたように、複数のアメリカの政治選挙サイトの予想によると、上院は共和党が過半数を維持するものの、下院は民主党が躍進して過半数を獲得する可能性が高く、4年ぶりに上院と下院の多数党が違う「ねじれ議会」が発生するとみられています。ところがここへきてその雲行きがちょっと怪しくなっているらしいんですよね。
どうも、トランプ大統領が自身の支持基盤受けをする政策を連発する猛烈な巻き返し策に出ており、下院でも民主党との格差が縮小傾向にあるようなんですね。本当にねじれ議会が誕生するのか、誕生すると何が起きるのか。今夜は、中間選挙直前のアメリカの最新状況をリポートしてみます。


そもそも中間選挙とはどんな選挙?

8月と同じこと言いますけどね、アメリカでは2年に1回、西暦の偶数年の11月の第一月曜日の次の火曜日に国政選挙が行われることになっていて、そのうちの4年に1回の大統領選挙がないときに行われる方の選挙を「中間選挙」って呼ぶんですね。
で、連邦上院議員の3分の1、連邦下院議員の全てが改選されるほか、州によっては同時に任期が満了した州知事選挙、各自治体の公職の選挙、欠員となっている非改選上院議員の補欠選挙などが行われるのが通例なんです。


今回の中間選挙にはどんな意味があるのか?

今回の中間選挙はですね、かけがえのない経済成長と世界平和のエンジンだった自由貿易体制を、アメリカファーストの保護主義政策を掲げて躊躇なく破壊するトランプ政権が、2年後の大統領選挙を有利に進める体制を固めるのかどうか、という観点から目が離せないと僕は思ってます。


元々トランプ不利だと言われていた原因は?

まず一般論でね、政権運営に関する批判票が集まりやすいものですから、大統領の出身政党が議席を減らすことが多いんですよ。第二次世界大戦後に行われた18回の中間選挙で大統領が所属する政党は、平均して下院で26議席失っています。
つまり、過去のパターンからみるとトランプ共和党は不利、とされていたということですね。


他にも原因はあるのか?

三つありました。

一番目が、ファームベルトの動揺。アイオア州、イリノイ流、ネブラスカ州、ミネソタ州など、アメリカ中西部の穀倉地帯は「ファームベルト」と呼ばれ、中西部の「ラストベルト」、さびついた工業地帯とならんでトランプ政権誕生の原動力となった地域ですよね。
ところが、トランプ氏が仕掛けた米中貿易戦争が影を落としていました。というのは、この地域は中国が報復関税を科したトウモロコシや大豆の生産の中心地にあたるからで、多くの農民が動揺していて、中間選挙が2016年の大統領選の再現となるかどうか、予断を許さない情勢になっていました。


二番目は、先ほどちょっと紹介したラストベルト、中西部のさびついた工業地帯の不信感ですね。実はイリノイ州、インディアナ州、ミシガン州、オハイオ州、ペンシルヴァニア州でも、圧倒的だったトランプ支持にちょっと異変が生じているとの見方があった。
当時象徴とされたのは8月に中西部オハイオ州で投開票があった連邦下院第12区の補欠選挙。1983年から共和党が議席を維持してきた選挙区で、現職議員の引退に伴い、地盤を引き継いだ共和党の新人候補が圧勝するとみられていたのに、大接戦になっちゃったんですね。


三番目は、女性候補が、特に民主党で増えていることです。
性暴力被害を訴えるMe Too運動を背景に、アメリカでは昨年来セクハラで告発された男性政治家の辞任が相次いだことに加えて、トランプさんに抗議する女性中心の大規模デモが各地で繰り返されており、反トランプ大統領の立場から政治に強い参加意識を持つ女性が増えているとみられていた。


これだけの逆風にもかかわらず、ここにきてトランプ有利だと言われるようになった背景は?

大別して二つあるんです。


一つが、大統領自身が激戦区の応援にフル稼働しているということ。アメリカの有力な新聞ニューヨークタイムズ紙によると、今回35州が改選される上院のうち、接戦と言われている8州に対し、トランプさんは共和党候補のテコ入れに行っているんですね。
その結果、投票日直前の100日間の中で選挙活動をする日数は少なくとも40日に達して、2002年のブッシュ大統領ジュニアの33日、オバマ大統領の2010年の36日と2012年の22日を、いずれも大きく上回る勢いだというんですね。


二つ目が、共和党のコアの支持層にアピールする政策を連発していることですね。
まずは20日にトランプ大統領は、アメリカが旧ソ連との間で結んだ中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄する意向を表明しました。条約の制限を受けずに戦力増強を進める中国に対抗する姿勢を明確にすることで、反中国意識の強い自身と共和党の支持層の支持固めを狙ったものだとみられています。

それから21日には、心と体の性が異なるトランスジェンダーの存在を、トランプ政権が事実上否定する措置を検討していることが新聞報道で明らかにされました。これは、性の定義を生まれつきの性別に限定するというもので、個人の選択に委ねたオバマ前政権の方針を覆すものなんだといいます。

それから22日は2つあるんですけど、トランプさんが南部テキサス州ヒューストンの集会で中間層への10%の所得減税の具体案を来週にも公表すると宣言した。2017年末に成立した大型税制改革に続く追加減税策ですから、選挙民は喜びますよね。

で、同じ日にトランプさんはアメリカに向かう中米からの移民集団の出国を食い止められなかったことを理由に、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルの三ヶ国への経済援助停止措置を表明しました。


時代に逆らうような乱暴な政策を連発しているが、本当に効果はあるのか?

普通の人が相手じゃなくて、トランプさんの支持層がターゲットですから、選挙対策としては効果があるみたいなんですね。

8月の放送では共和党の先行きに影を落としているのはトランプさんに対する支持率の低さだと指摘したんですね。あの時は、政治専門サイトのRCP、リアル・クリア・ポリティクスが調べたトランプ大統領の支持率は43.3%だったんですね。その後人気が落ちて、9月半ばには40%割れ寸前まで下がってたんですよ。ですが、昨日の支持率はなんと44.7%と、一連の政策を打ち出す前の先週土曜日10月19日の43.9%から0.8ポイントも急伸したんですね。
で、RCPの木曜日現在の政党支持率は、民主党が49.4%、共和党が42.1%と、7.3ポイントの差があるんですけども、実はこれも9月4日に9.5ポイントの差があったことを思えば、明らかに共和党は巻き返していますよね。


獲得議席の予想は?

最新の上院の議席の獲得予想は、RCPが共和党53に対し、民主党47。それから別の、結構有名なんですけど選挙の分析サイトのザ・クック・ポリティカル・レポートによると、民主党は49、共和党は50、不明が1となっており、共和党が過半数を死守しそうな勢いですよね。
一方、下院については、RCPによると民主党が205、共和党が199を固め、残り31議席で接戦を繰り広げている。ザ・クック・ポリティカル・レポートでは、民主党が209、共和党が196を固め、残り30議席がせめぎ合っているという状況だそうです。

だから予断を許さないし、共和党が猛烈に巻き返していることも事実なんですが、今の状況だとまだなんとか僅差で民主党が第1党の座を奪還してもおかしくないぎりぎりの状況といえるんですかね。


選挙の後は、トランプ大統領はどんな政権運営を行うつもりなのか?

それで興味深いと思うのはですね、通商政策については、仮に中間選挙で共和党が大敗したとしても、トランプ大統領が通商政策のディール重視の交渉姿勢を変化させるとは考え難いとしている、大和総研ニューヨークリサーチセンターのシニアエコノミスト橋本政彦さんの分析なんです。これは興味ある人のために番組のHPにリンク貼っておきますね。

実は僕もですね、トランプ大統領の狙いが2年後の大統領選で勝利を収めることにあるのが明らかな以上、中間選挙の結果がどうなろうと、自身の支持基盤受けのする保護主義的政策を見直す可能性は小さいんだろうなとにらんでいます。


町田さんもトランプ政権の姿勢は変わらないとみている?

そうですね。ただですね、今回大切なのは共和党の勝ちっぷりの方なんだろうと思うんですよ。2年前の大統領選のような勢いを見せつけられなければ、トランプさんは2020年の大統領選で共和党の大統領候補の指名すらままならなくなる可能性が残っちゃうでしょ。
なので、そういった意味でいうと最後まで、トランプさんが、あるいは共和党がどれぐらい勝ちそうか。そこから目が離せない。アメリカの中間選挙はそういう状況が続きそうな雲行きなんですね。 


感想

トランプ大統領が、オバマ前大統領の政策と一転、トランスジェンダーを法的に認めない方向性で検討しているとのニュースに目を疑った。時代に逆行する乱暴な政策を打ち出すことが、選挙対策として効果を発揮する局面はよく目にするが、その度に虚しさを覚えてしまう。


番組HP:http://www.radionikkei.jp/fukabori/