2018/10/19 町田徹のふかぼり! ラジオNIKKEI第1

小売りの老舗、アメリカのシアーズが破産法適用を申請。黄金期を支えたカタログ販売にあぐら、アマゾンらネット通販に敗れる



125年の歴史を誇る、アメリカの小売業界の老舗、シアーズ・ホールディングスが、東部時間の月曜未明、ニューヨーク州の破産裁判所に、日本の民事再生法に相当する連邦破産法11条の適用を申請し、実質的に破綻しました。裁判所に提出した資料によりますと、負債総額は、およそ約113億ドル、およそ1兆3000億円、ということです。

今回の破綻の原因は、1970年から1980年代にかけて、シアーズを小売業全米1位の座に押し上げる原動力となったカタログ販売モデルに続く収益の柱の構築で遅れをとり続け、最後はアマゾン・ドット・コムなど新興のネット通販会社に対抗できなかったことだと思います。

その背景を探るとともに、小売業の再編が本格化してきた日本の小売業者の生き残り策にどのような教訓を残したのか探ってみましょう。 


シアーズはどんな会社?

創業は1893年。イリノイ州シカゴで会社を設立しました。今は違う名前ですが、2013年まで長らく全米一の高さを誇ったシカゴのシアーズタワーを作った会社としても有名です。

初期はカタログ通販を通じて成長した。家族と暖炉の前で団らんしながらこのカタログを見ながら、買い物をする。それがアメリカ人のライフスタイルだった時代もあるんです。

最近は、ネット通販の拡大を背景に7期連続で最終赤字を計上と、不振を極めていたわけですね。


アメリカで老舗シアーズが強かった理由と、破綻した原因は?

シアーズは破綻の直前、百貨店シアーズとディスカウントストアKマートをおよそ700店運営していました。1980年代までは、消費者が求めるものを幅広く提供する総合小売をいち早く展開する活力があって、ウォルマートと小売業一位の座を競っていました。

ところが最近は、EC(電子商取引)へのシフトに乗り遅れ、最後まで消費者のライフスタイルの変化に適応できなかったのが破綻の主因とされています。

あと一つ破綻の原因があるとすれば、経営判断の甘さ。有力なブランドの相次ぐ売却とか、老朽店舗の更新投資が後手に回って、お客さんを集める集客面での競争力を失ってしまったこと。

シアーズを率いてきたエドワード・ランパート氏は、証券会社ゴールドマンサックスの出身で、2003年にアメリカ小売業界10位のKマートを自身のヘッジファンドの傘下におさめたあと、2005年に5位のシアーズを吸収合併。当時は「次世代のウォーレン・バフェット」とマーケットでもてはやされていました。

ところが、小売業経営では手腕を発揮できなくて、ネット通販の拡大など消費者の変化に合わせたビジネスモデルを構築できないまま、迷走を続けました。


エドワード・ランパート氏の失敗とは?

例えばですね、ウォルマートだと「エブリディ・ロープライス」、毎日安売り、という明確なキャッチフレーズ、コンセプトを打ち出してお客さんを集めたわけですね。シアーズはそういうのができなかったし、工具や生活家電の販売が主体で、後発組のホームデポやロウズにもお客さんを奪われてしまった。

2013年にランパートさん自身が自らシアーズのCEOに就任したあとは、アパレルのランズエンドとか、工具のクラフツマンとか、そういう収益力のあった自社ブランドを分離売却する売り食い状態に入っていました。

結果としてシアーズは急速に競争力を失って、人員や店舗の削減をして、お客さんも来なくなるという悪循環に陥った。10年前には4000近くあった店舗が現在は700まで減少しました。

2016年の株主宛の手紙でランパートさん自身は、アマゾンとかウーバー・テクノロジーとかテスラとかそういったIT企業に言及して、最新技術への投資の重要性を強調していたのですが、実際は店舗で雨漏りが目立つとか、エレベーターが壊れているとか、そういうのがほったらかしという状態が散見された。彼はほとんど本社にも顔を出さなかったし、店舗で姿を見ることもなかったので批判が高まったということですね。


アメリカの小売業は現状、ECの一人勝ち

アマゾンが豊富な品揃えなど物販の強みだけではなくて、動画配信など様々なサービスまで組み合わせて消費者の日常生活に浸透していっていますよね。かつ、それで集まる膨大なデータを解析してビジネスを広げているというのは明らかな事実ですよね。


シアーズのような旧来型の小売業はかなり苦戦している?

一般論で言うとその通りで、実店舗の賃料とか店員の人件費とか、そういうコストを余分に抱える旧来型の小売業は、総じて苦戦を強いられています。

つぶれた会社が多くてですね、例えば2011年に全米2位の座にあった書店チェーンのボーダーズ。2016年にイオンとの合弁で日本でも展開していたスポーツ・オーソリティー、2017年にアパレルチェーンのザ・リミテッド、家電量販店のラジオシャック、玩具販売のトイザラス、などが相次いで破綻し市場からの退場を迫られました。

アメリカの雇用は過去10年で800万人も増えているのですが、小売の販売業をみるとたった2万人しか増えていないんですよね。


旧来型の小売業は全滅?

全滅はちょっと言い過ぎで、善戦している小売業者もいるし、そういうところを参考にしたいんですけどね。
例えば、ホームセンター大手のホームデポ。ここは過去5年で売上高を35%、株式の時価総額を2倍に増やしました。
あと、家電量販のベストバイなんかも過去5年で時価総額を5割近くのばすなど、業績を急回復させています。

善戦できている理由はどこにあるかと言うと、アマゾンと差別化できる特色があるかどうかなんですよ。

ホームデポの場合、店舗を、お客さんの課題を解決する場、と位置付けて「こんな作業をしたいんだけど上手くできないんだけどいい工具あるかなぁ?」とかね、そういう日曜大工の悩みなんかを聞いてあげて消費者を取り込むということをやった。それから、専門業者の在庫に応じてお客さんのところにスムーズに配達する仕組みを取り入れて顧客層を広げています。

あと、かつて小売業界でシアーズと覇を競ったウォルマートですが、こちらは新興ネット通販会社を2016年に買収したのを機にネット経由での販売を急拡大させている。同時に、ネットで注文した商品を店舗の駐車場で受け取れるサービスとか、店舗で支払いや価格比較ができるアプリの開発とか、とにかく、店舗の方にもお客さんを呼び寄せる仕組みづくりを頑張っているんですよね。


シアーズの再建のシナリオは?

シアーズ・ホールディングスはアメリカ東部時間月曜日の未明に、ランパートさんが取締役会の会長にはとどまるものの、CEO職は辞任したと発表して、併せて年末までに700のうちの142店舗を閉鎖する計画を表明した。当面の計画は、CFO(最高財務責任者)ら3人で構成する委員会が担当すると。

シアーズによると、700のうち400店舗程度は利益を出せる状態にあるので、現在およそ68000人いる従業員には引き続きちゃんと給料を払うと言っているそうですね。

それから当面の運転資金として、3億ドル、およそ340億円、の融資枠の確保に成功したと。この資金で閉鎖対象以外の店舗で営業継続を目指すと。

さらに、ヘッジファンドと、もう3億ドルの劣後融資の交渉もしているようです。


上手くいきそうだが、懸念材料はあるのか?

上手くいくといいんだけど、ダメだった前例も少なくないんですよね。

例えば、2017年に同じく破産申請した玩具量販のトイザラス。こちらも当初、事業継続を模索したんですけど、債権者との交渉が難航、最終的に買い手が見つからなくて、アメリカ国内の事業の清算に追い込まれた経緯があるので、シアーズの再建も決して楽観できる状況にはないと思います。


日本もアマゾンが猛威を振るっているが、日本の小売は大丈夫?

アマゾン・ドットコムの猛威は日本も同じで、日本のEC市場規模は2017年に16兆円超と、10年前から2倍以上に拡大しました。そこで日本で活発なのが、既存の小売業が、生き残り策だ、といって展開している合従連衡の動きですよね。

ユニー・ファミリーマートホールディングスの場合でいうと、今月11日、ドンキホーテ・ホールディングスに、スーパー事業を展開する子会社ユニーを売却すると発表しました。これ、ドンキの方はいいと思うんですよ。というのは、ドンキの店舗はほら、迷路みたいなレイアウトとか、大量の手書きの販促物なんかがあって、どこに何があるんだ、って探検して探しているような、ああいうのがあるんですよね。それはネット通販にないもので、消費者を呼ぶ一つの目玉になるんですね。


ECに対抗する力の有無が小売業者の明暗を分ける時代は、日本でもすぐそこまで迫っていると思います。5年前と比べて売上高と時価総額の両方がマイナスになったという点で、日本を代表する百貨店チェーンを展開する三越伊勢丹ホールディングスが、シアーズと似たような状況にあるので、どういう手を打つのかこれからやっぱり注意して見ていきたいと思いますね。

あと、品揃えとか利便性、価格とか、小売店の特色を構成する要素っていっぱいあるんですけど、どれも一つだけでアマゾンに対抗というのは簡単ではないので、いくつか組み合わせて付加価値を高めていかないと、ECに対抗して生き残るのは難しくなるんじゃないかと思います。



番組HP:http://www.radionikkei.jp/fukabori/