2018/11/09 町田徹のふかぼり! ラジオNIKKEI第1 を元に作成

GAFA規制の導入へ。経産、総務、公取が本格調査



経済産業省、総務省、公正取引委員会の政府3機関は月曜、世界経済を席巻しているアメリカのGAFA4社などのプラットフォーマー型ビジネスなどに関する中間報告書を公表しました。各方面にとって不透明な問題が多いので、一般から意見を公募するほか、徹底的に調査して規制案を作る方針を明らかにしました。

要は調査をやるということで、中身はこれからなんですね。ただ、ある程度中身も予測できるので、しかも調べ方が大胆なので、軽く見てはいけないかなと。例えばGAFA4社の日本法人の中には、本国への報告に追われて蜂の巣をつついたような騒ぎになったところもあったんです。なので、その調査と規制作りの行方、何が起きそうなのかを探ってみたいと思います。

 

経産、総務、公取3機関の関係は?

経産省と総務省、というか旧郵政省、なんですけど、この2つは1980年代の初頭に付加価値通信サービス(VAN)の所管をめぐる縄張り争い、「VAN戦争」を繰り広げて以来、霞ヶ関の官庁街では知らない人がいないほど犬猿の仲なんです。
一方、公正取引委員会は長年、経産省、財務省からトップを送り込まれてきて、それぞれの産業振興、育成行政に逆らえない体質があり、「吠えない番犬」と揶揄されてきました。


そんな関係の三者が今回協力し合うのはなぜ?

安倍さんなんですよね。実はですね、今年6月に閣議決定された未来投資戦略2018において、「プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備のために本年中に基本原則を定め、これに沿った具体的措置を早急に進めるべきもの」と定められたことが背景にあるんです。
6年にわたって安倍一強体制でしょ。3期目の総裁任期を迎えた安倍さんは3機関に限らず、中央省庁の人事にどんどん介入してくる怖い存在なので、その総理が議長を務める未来投資会議が提言し、閣議決定までしたプランに従わないわけにはいかないというのが3機関の立場なんですよ。

首相案件なんです。
なので、犬猿の仲の経産、総務両省と、「吠えない番犬」公取が組むという異例のフォーメーションが実現したんですね。


そのフォーメーションで具体的に何を?

今までにやったことは、実は3機関は今年の7月10日に競争政策、情報政策、消費者政策などの学者を集めて、「デジタルプラットフォーマーをめぐる取引環境整備に関する検討会」というのを設置して、この研究会の秘密会合をこれまでに7回開いて、研究会として外国の制度などを評価研究したり、日本はどういう課題があってどうすべきかということを論点別にレポートにまとめたっていう段階なんですね。

例えば、僕が記事を書くとすればですね、「このレポートの内容を発表するとともに、レポートに盛り込んだ課題や対応策に間違いがないか検証するため、本格的な調査を行う方針を明らかにした」、と書くんだろうなと思います。


調査だけやります、ということ?

うん。あの、まずは調査だということですね。すでにGAFA規制を導入する場合の課題と対応策の論点整理のレポートを公表しており、ここに書いたことが適切かどうかの調査をやるというんだから、大したことないと思うと大きな間違いですよね。

それと実は、事務局が新聞なんかにリークしているらしいんですけど、調査方法として、普通にやるように一般から意見公募するだけではなくて、独占禁止法第40条に規定されている強制調査権を行使する、と研究会がリークしている点が重要なんです。

強制調査権、40条に違反すると罰則があるので、協力しないと罰金が科されちゃうんですよね。だから簡単には逃げられない調査になってくるわけですね。しかも、この権限を元々持っていたのにきちんと使えていなかった「吠えない番犬」の公取だけではなく、電力とか通信の規制でこれまでにノウハウを蓄積した経産省と総務省の両省が加わるから、ますます強力なチームで調査するという話になるわけですよね。

だからGAFAの日本法人も慌てているということなんです。取材してみると、今回の発表に驚いてしまって、そのGAFAの中に、アマゾンとかアップルのような、収益のうち電子商取引の割合が多いところがターゲットで、いきなり違法な取引がないか狙い撃ちにされるんじゃないかと疑心暗鬼になって慌てていたところもあったんですよね。
その根拠は何かと聞いてみると、レポートに「過去の電子商取引を含む事業者に対するヒアリングで問題のありそうな取引実態が確認された」と書いてあった点なんです。
ただ、今回言い切っているわけでもないので、ちょっと動揺しすぎている感じで、僕からすればそのGAFAの狼狽ぶりの方におどかされちゃったという感じですね。


レポートの内容で注目すべき点は?

規制の導入の流れを確実にしたいんだろうと思います。改めてGAFAの巨大さを示しました。2018年3月末時点の株式の時価総額の世界ランキングなんですが、1位がアップル、2位がグーグルの持株会社のアルファベット、4位がアマゾンドットコム、6位が中国勢なんですがテンセント、7位も同じく中国勢でアリババグループ、8位がアメリカに戻ってフェイスブック、という具合なんですね。

で、そのプラットフォーマーというものについて、単なる取引の媒介者、仲介者にとどまらず、非常にたくさんの企業とか個人が参加する市場そのものを設計し、運営し、管理する存在になっているにもかかわらず、金融商品取引法で規制される証券取引所とか卸売市場法で規制される卸売市場と違って、特段の行法による規制を受けていないじゃないかと。やはり規制が必要になるんじゃないのか、という記述もしっかりありましたね。


今後この問題で問題になりそうな点は?

レポートが、大別して7つ明らかにしているポイントがあるんです。全部法規制がらみなんですけど。

1つは国内法をどうするかということで、プラットフォーマーは利用者である中小企業や消費者にさまざまなメリットをもたらすと認めつつも、巨大化して寡占化・独占化しやすい傾向があるので、独禁法的な法規制が必要じゃないか、というのが1つですね。

これに関連して、公正かつ自由な競争を確保するため、M&Aによって潜在的な競争相手の芽を摘むような企業結合、ライバルを買っちゃうという話ですね、そういうものに待ったをかける仕組みがいるんじゃないかとか。

それから取引慣行の透明性とか公正性を確保するためには、一過性な調査じゃなくて、継続的に調査分析を行う専門組織を創設してはどうかと。新たな政府機関を作ったらどうかまで言っているんですね。

あと、ちょっと違った論点なんですけども、プラットフォームビジネスに、既存の行法、例えば電力の行法や通信の行法って全くプラットフォームビジネスに対応していないじゃないですか。だから、それに今のイノベーションを取り込むような形で見直しをして、例えばサイバー攻撃などに耐えるような品質を維持させるような、とかね。そういう安定性とか安全性の確保をできる行法にして利用者保護をする必要があるんじゃないかという指摘もありました。

それから、先行しているEUを意識しているんだけども、EUみたいな取引環境整備が必要だとか、特にデータを移転する場合、データを他の企業に解放する場合、個人情報をどのように保護するか、そういった観点からの規制が必要だという議論をしているのと、

最後の最後に、プラットフォーマーって国境を越えて活動するので、ルールの方も国際的な整合性がいるし、逃げていかれないように域外適用するやり方とか、エンフォースメントで実効的に法律を執行できる体制がいるんじゃないかということで締めくくっていますね。


まとめ

経産、総務、公取の3機関は今回の抜本調査を年内に終えて、早急に具体的措置を実施するとしているので、もしかしたら来年、法改正が実現するかもしれません。

その際に、例えばですけど、通信の場合は電電公社時代からNTTなどに通信の秘密の遵守というのを課せられてきているんですね。で、プラットフォーマーにもそういう規制をかけたらどうか、とかですね。
それから今までほとんど保守的で独禁法の運用をやってこなかったんだけど、優越的な地位を濫用しているとか、下請けいじめをやっているといったような話は、もっと積極的に適用したらどうか、みたいな話ですね。そういうのは出てくるんじゃないかなと思いますね。

それから、EUの一般データ保護規則であるGDPRのような規則というのは今回のレポートでやりそうなことを書いているんだけど、どう考えても経産、総務、公取の問題ではない。なので、今回の検討会はオブザーバー扱いなんだけど消費者庁が入っているから、ここがこの法律立法過程で中心に出てきて3機関はサポート役に回るのかもしれないな、みたいなものも見えますね。

あと、複雑になるから今日は取り上げなかったんだけど、GAFA4社とか中国のテンセント、アリババみたいなところを規制した結果、日本の楽天やヤフーなどずっと小さなプラットフォーマーの成長の足を引っ張らないか、という議論もこれから必要かもしれないですね。

いずれにしても、プラットフォーマーって第4次産業革命の担い手だとされていて、経済とか産業育成の観点でものすごく大事な存在になっていて、その規制をどうするかというのも見逃せない問題なので、その行方については折に触れてカバーしていきたいなと思っています。




番組HP:http://www.radionikkei.jp/fukabori/