2018/11/16 町田徹のふかぼり! ラジオNIKKEI第1 を元に作成

RIZAP、スルガ銀行、ソフトバンク...。2018年度中期決算で、町田徹が気になった、あの戦略とは?





「結果にコミット」のCMで有名なRIZAP。歴史は?


RIZAPグループの創業は2003年4月。現社長の瀬戸健さんが、健康食品の通信販売を目的として東京都中野区に資本金900万円で健康コーポレーションを設立したのが始まりです。

以後、札幌証券取引所アンビシャスに上場するとともに、M&Aによって、JASDAQスタンダードや東京証券取引所に上場している企業を次々と傘下に収めて急成長してきました。連結子会社は実に85社。グループの従業員は今年3月末に7063人に達しています。

ところが、今回の決算で、成長軌道の異変がくっきりと明らかになった。


今回の決算の内容は?


RIZAPグループは水曜、2018年4ー9月上期連結決算を発表し、営業損益と最終損益が赤字に転落したほか、通期も営業損益と最終損益がともに赤字になるとの下方修正を明らかにしました。
最終損益は上期実績が85億円、通期見通しが70億円の赤字となっています。

RIZAPはM&Aで手に入れた企業を、時々2〜3年で黒字化するとしてきたものの、上手くいかないケースも多かったんです。2019年3月期通期では、不採算事業の整理などに伴う損失155億円の計上を迫られます。

で、瀬戸社長が表明した経営再建策の柱は、新規M&Aの凍結、グループ各社の早期再建、成長事業への経営資源の集中の三つでした。

三つの措置はいずれも必要なことです。だけど、口で言うほど簡単ではない。
というのは、RIZAPグループのM&Aは、相手の成長力を取り込むという通常のM&A戦略とは全く違うもので、ある種の錬金術的な収益拡大策に使うものだったからなんです。

キーワードでいうと、負ののれんの償却という手法が多用されてきました。


負ののれんの償却とは?


普通はのれんの償却、つまり、正ののれんというのが問題になるので、そちらから先に説明します。

こちらは、M&Aをやって、企業を市場価格より高い価格で買った場合に発生する会計処理なんです。
日米の会計基準の違いで、いつ処理するかのタイミングは違うんですけども、差額分を損失として処理するので、企業がせっかくその期に稼いだ利益が減ってしまうことになります。
東芝がウェスティングハウスの買収失敗で破綻寸前になったのもこのケースでした。

つまり、正ののれんは損失になるんです。

これに対して、負ののれんは、市場価値より低い価格で企業を手に入れた時に発生します。差額分は利益扱いになるので、償却処理すれば、利益をかさ上げできるんです。

注意して欲しいのは、直ちに違法行為になるわけではないっていう点と、とはいえ、実際にキャッシュ、利益が生まれたわけではないということですね。その意味である種の錬金術だと僕は言いました。

瀬戸社長は2年ほど前から業績予想に織り込んでいた、と認めています。
2018年3月期の営業利益135億円のうち、6割以上は負ののれんだったし、2019年3月期も、買収が実現していないにもかかわらず、期初の利益予想にあらかじめ織り込んでいた。この負ののれんが絵に描いた餅となり、今回の下方修正を迫られたわけです。

こうした会計処理なしで、地道にグループ各社の経営再建を実現して利益を計上していく、という作業はこれまでRIZAPグループが経験したことのない厳しい道のりになるわけです。



スルガ銀行の決算は?


水曜、スルガ銀行は、2018年4ー9月期連結決算で、審査書類改ざんなどの不正行為の横行が明らかになったシェアハウス向けの融資に関して、焦げ付きに備えた引当金を積み増した結果、最終損益が前年同期の211億円の黒字から一転、985億円の赤字に転落したと発表しました。

今回の引当金の積み増しって十分なもので、これで経営再建は上手く進むと評価していいのかというと、まだ断言できないと思うんです。
まず、スルガ銀行がどういう対応をしたのか、詳しく見てみましょう。

不正融資などが横行していたシェアハウス向け融資の9月末の残高は2034億円。この融資の延滞率は30.13%と、スルガ銀行の個人ローン全体の延滞率2.59%に比べて極端に高いんです。これは、貸したお金を返してもらえない可能性が高いことを意味しますね。

で、注意を要するのは、スルガ銀行はシェアハウス向けの融資をしている人に対し、他の融資をしている例もあって、そうした人への融資額を含めた関連融資は合計で2537億円に達していました。

さらに問題なのは、この危なっかしい融資2537億円に対して、きちんと担保を取っていた分は952億円分しかないということなんですね。
そこで、新たにおよそ900億円が回収不能になった場合に備えて、貸倒引当金を積み増し、合計で総額1362億円の貸し倒れに対応できるようにした、というのが今回の損失処理なんですね。

これにより、シェアハウス関連融資全体の91.52%が貸し倒れになっても新たな損失が出ない体制を確立したとスルガ銀行は説明しています。

で、スルガ銀行は、シェアハウス向け融資の他にも、創業家、関連企業などへの融資について134億円の貸倒引当金を計上しました。

そういったことも合わせて、スルガ銀行の有國社長は決算記者発表で、損失処理ができたとした上で、陳謝するとともに報酬カットを打ち出して、不祥事の幕引きをはかったんです。



これで不祥事は幕引きになるか?


燃え盛っていた火事は消したと思いますが、他に燃え出してもおかしくないものがないとは言い切れないので、まだ視界は晴れません。

今回の問題は、借り手や借り手を紹介した不動産会社が十分な担保や収入があるかのように偽装したり、銀行員がそうした行為に関与したり、見て見ぬ振りをして不正融資がまかり通ったという問題です。
で、シェアハウスはその融資を受けて購入なり建築したりする不動産に借り手も一緒に居住するものだったわけですが、シェアハウスで起きたことが他の投資用不動産やワンルームマンション融資では絶対なかったと言い切れるほどの調査をする時間はなかったはずなんです。

投資用不動産ローンやワンルームマンション融資の残高は合計で、シェアハウス向け融資の10倍以上もあります。もし、今回の融資のような不正がこっちでもあったら、大変なことになりかねないでしょう。

仮に問題がなかったとしても、シェアハウス向け融資はドル箱でしたから、それに代わる飯の種、収益源が今のスルガ銀行には見当たらないという問題も残っています。


ソフトバンク上場問題について


<町田さんは先週金曜夕方の町田徹のふかぼり!フロントページで、ソフトバンクのスマホ販売の伸びの鈍化を指摘し、親会社の意向に左右されやすく、一般投資家との利益相反が生じやすい親子上場をするのは好ましくないとおっしゃっていました。
ところが、東京証券取引所は月曜、ソフトバンクグループの通信子会社ソフトバンクの上場を承認し、12月19日に上場が実現する運びになりました。>


もちろん、私と意見が違う方はたくさんいると思います。
特に成長性をめぐってはいろんな議論があり得ます。ガラケーからスマホに変わって、飽和したと思われていた市場に成長力が戻ったように、様々なヒット商品が生まれる可能性だって否定できないでしょう。
仮にそういったものが出てこなくても、ソフトバンクはなかなか沢山の利益を稼いで、巨額の配当をしている企業ですから、高利回り商品としてソフトバンク株が魅力的だ、という投資家もたくさんいるかもしれません。

ですが僕は、菅官房長官が2割から4割の値下げを迫り、ライバルのNTTドコモが収益から顧客に4000億円の還元をするとしている時期でもあり、ソフトバンクの収益環境は従来より厳しくなっていくと思います。

そして、なによりソフトバンクグループがソフトバンク株の売却益をファンドビジネスに投入していることに首をかしげざるを得ない。巨大な株式公開企業でこんなビジネスモデルは世界的にもあまり例がないですよね。




番組HP:http://www.radionikkei.jp/fukabori/