2018/11/23 町田徹のふかぼり! ラジオNIKKEI第1 を元に作成

ゴーン逮捕で揺れる日産を徹底解剖




有価証券報告書の虚偽記載容疑でカルロス・ゴーン容疑者ら2名が逮捕されたことを受け、日産自動車は昨日の臨時取締役会で、ゴーン容疑者らの会長・代表取締役解任を決めました。

そこで今夜は、
一体なぜこの時期にこんなことが起きたのか? 仕掛け人は誰なのか? 検察が異例の捜査手法と異例の逮捕容疑を掲げた訳は? 捜査の行方は? 西川日産の危機管理は万全だったのか? そして、今後の日産と日産・ルノー・三菱自動車の三社連合の将来はどうなるのか?

それらを大胆な仮説も交え、「ゴーン逮捕で揺れる日産を徹底解剖」と題してふかぼってみたいと思います。
 
 

ゴーン容疑者に対する日産プロパーのクーデター説の可能性は薄い?


仮に、日産執行部がゴーン容疑者の失脚を狙って周到な準備の上で検察当局に通報したのならば、
容疑はゴーン容疑者ら2名の個人犯罪、つまり、背任や横領に絞り込まれるはずです。

ところが、検察が全面に押し出したのは、有価証券報告書の虚偽記載だった。これは会社の犯罪にほかならない容疑ですから、自爆したのかって話ですよね。

だから、日産側に陰謀があったとは考えにくいと僕は思います。


では一体誰が仕掛けたのか?


日産の中の執行部ではない人が考えられると思います。

それほど偉くないけれども、逮捕されたゴーン容疑者やケリー容疑者の有価証券報告書の虚偽記載に関与したか、直近にその犯罪を知り得る立場にいた人。

おそらくはその人、もしくはその人たち、が、まず日産に内部通報し、なかなからちがあかないことに苛立ち、直接東京地検特捜部にも通報した可能性があると思います。

一部報道では、
検察当局が外国人の法務担当の専務執行役と司法取引したことを根拠に、この人物が内部通報の主だったと報じているところがあります。

だけど僕は、最初の通報者はもう少し下のランクの人であっても不思議ではないと思います。
その通報を受けて、検察が、通報者と当時の当該部門の責任者である専務執行役に司法取引をもちかけたとしてもなんら不思議はないでしょう。


検察が司法取引をもちかけた理由は?


日本版司法取引は今年の6月に導入したばかりなんですね。

日産クラスの大会社に適用するチャンスができたんですから、当局が「さっそく実績を作るんだ」と色めき立ったことも想像に難くないでしょう。

罪を軽くしてやると言えば安心して上司の犯罪を証言する気になる可能性も大きいですよね。
で、西川社長ら日産執行部はそうした動きを事後的に察知して、ゴーン氏の任意同行前に検察当局と接触、社内調査の結果を提供して捜査に協力したのではないでしょうか。

協力してきたこと自体は、月曜日の記者会見で西川社長も言及していますから間違いないと思います。


日産は他人事のように見えるが?


悩ましいというか事情があるんじゃないですかね。

日産執行部が最初の通報者、情報提供者じゃなかったからこそ、背任や横領より有価証券報告書の虚偽記載の方が立件しやすい、という検察の事情を受け入れざるを得なかったんじゃないですか。

そこには検察OBの弁護士さんらの勧めもあったと思います。


有報虚偽記載の方が立件しやすいというのはなぜ?


背任とか横領だとすれば、盛んに報じられている住宅の供与とか旅行代金の肩代わりが焦点になっているとすると、
住宅では一度でも、旅行中ならばその間に一回でも、ゴーン容疑者が顧客と会っていれば「商談していたんだ」と主張されてしまって、いきなり検察側の主張が崩れる可能性だってゼロではないと思います。

そのぐらいこのケースでの背任とか横領の立証は難しいんじゃないですかね。

それに対して、
有価証券報告書の虚偽記載ならば、司法取引した内部通報者たちにゴーン容疑者らの犯罪を語らせて証拠を固めておけば、たとえゴーン氏やケリー氏らが否認しても、証人がいるとして有罪に追い込めますよね。

というふうに検察当局が判断しても不思議ではないし、そもそもこれ検察がよくやる手です。


不祥事の原因はゴーン氏の在任期間の長さ?


付け加えるとすればガバナンスの問題ですね。

例えば、社外取締役の数が9人中わずか2名しかいません。
これでは取締役会で執行サイドにさまざまな注文をつけようとしても多数決によって社外取締役の意見は通りませんよね。

さらに、ガバナンスを円滑にするためには、会社組織の問題もあるんですね。

現在最も進んだ組織形態としては委員会等設置会社というのがあって、これはまだ今年6月の段階で74社、上場企業全体の2%程度しかない。

次に監査等委員会設置会社というのが現在およそ900社、上場会社の4分の1程度がここに移行しています。

最後が監査役会設置会社で、これはつまりもっとも遅れた形なんですが、日本では2500社前後、全体の75%残っているんですね。

この監査役会設置会社の監査役というのは、取締役会での議決権がないんです。
なので今回のような問題を見つけても、取締役会に出て行って強く是正を迫って自分で「直せ」という票を投じることができないんですね。

日産はこの一番遅れたパターンなんですよ。
で、ワンマン会長を抱え、日産の組織にストレスが高まっていたことは間違いないでしょう。


捜査の行方は?


日産の「個人の犯罪にしたい」という目論見を否定するかのように、法人としての日産が責任を追及されそうだという新聞報道が相次いでいますよね。

そうなると、7億円以下の罰金の可能性があります。

ちなみに個人の場合は、10年以下の懲役か1000万円以下の罰金、もしくは両方なんです。

ある弁護士さんは、
虚偽記載に対する量刑は厳しくなる傾向があるので、ゴーン容疑者の場合、5年間でおよそ50億円の過少記載ですから、執行猶予なし、4〜5年の懲役になってもおかしくない、と話していました。

あとは、司法取引の対象がどこまでになるかもポイントです。

最初に内部通報した人が免責になるのは説得力があると思うし理解が得られると思いますが、西川社長やその他の取締役が対象になるようでは、バランスを欠き、甘すぎると世間が反発して、日本版司法取引が定着しにくくなる可能性がありますよね。


日産の役員はどうなるのか?


西川社長ら取締役陣ですが、刑事処分の対象になろうがなるまいが、民事上の責任とか経営責任を免れることはできません。

日産の取締役は、逮捕されたゴーン容疑者ら2名を除いて今7人いるんですけど、この7人のうちの社外取締役2名を除く5人は、虚偽記載があったとされる5年間にも取締役を務めているので、この5名は、例えば引責辞任などの形で責任をとらなければいけない立場にいます。

もし今年の3月期も虚偽記載が出てくるようであれば、社外取締役の2名もアウトです。 

しかし、辞任の意識は薄そうに見えます。
月曜日の記者会見で西川社長は、再発防止やガバナンス強化を考える第三者委員会を自ら指名して再建、信頼回復を急ぐ、と話していました。
つまり居座って自らの手で立て直しを進めたいと言わんばかりの話だった訳です。

中途半端に続投されると、いつまで経っても日産の経営責任のけじめがつかず、東芝が陥ったようにトップの首のすげ替えが繰り返されることになりかねない。
ここは西川さんがきちっと決断して、古株の役員たちを全員引き連れて退任することが重要です。

そしてフレッシュな経営者を立てて再建に望むことが日産の再生を早めるためには何よりも大切なことだと思います。


ルノー・日産・三菱自動車のアライアンスはどうなるのか?


この三社の出資関係は、ルノーが日産に43%出資しているのが最大で、次いで日産が三菱自動車に33%、そして日産がルノーに15%出資する関係となっています。

ちなみにフランス政府のルノーへの出資は15%です。

何が言いたいかというと、要するにいずれも、過半数を押さえて子会社化して資本の論理で結びつけておくという形になっていないのがこの三社のアライアンスの特色なんです。

一方、三社の2017年の生産台数を見ると日産が581万台、ルノーが376万台、三菱自動車が103万台ですから、日産はルノーの風下に立っていることが面白くないでしょうね

出資比率と生産台数との関係にバランスが取れていないということです。

これまではそれであってもゴーン氏のカリスマとか人的な指導力で緩やかな同盟関係を維持してこれたアライアンスですが、
今この扇の要を失った状態で、提携が次第に解消に向かって行っても不思議はないでしょう。





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