2019/01/11 町田徹のふかぼり! ラジオNIKKEI第1 を元に作成

6月に迫ったG20大阪サミット 議長国・日本の役割とは?



日本で開かれる首脳会合として史上最大規模のG20大阪サミット、主要20カ国・地域首脳会合の開催まで残り半年を切りました。

実はこのG20サミットの日本開催は、2008年の第一回会合の時から日本の悲願でした。

安倍総理はこの会議の成功に執念を燃やしており、昨年10月にスペイン・フランス・ベルギーなどを歴訪、サミットの際の協力の約束を取り付けたのに続き、今週水曜日からはオランダとイギリスを訪問しています。


悲願のG20、成功させるために必要なことは?


昨年のG20を見てもらうとわかるのですが、テーマは多くさまざまな分野に及びますが、とはいえ、G20の正式名称は

「金融・世界経済に関する首脳会合」

ですから、金融・資本市場の動揺を未然に防いで、持続的な世界経済の成長を確保することが最大のテーマです。

日本は議長国としてG20大阪サミットをきっちりと仕切れるのか。

それは単に日本の外交の存在感を示す、といったレベルではなく、世界的な危機の封じ込めや明日の世界の安定に欠かせない役割です。

そこで今週は、G20大阪サミットに臨む日本の現段階の戦略や準備ぶりをチェックしてみましょう。
 

 

G20大阪サミットでは何が行われるのか


実は首脳会合だけではなくて、関係閣僚会議などを含めて、全部で10の会合が計画されています。

最初、1月から6月までは、

東京で開く、財務大臣・中央銀行総裁代理会合、

新潟で開く、農業大臣会合、

福岡市で開く、財務大臣・中央銀行総裁会議、

つくば市で開く、貿易・デジタル経済大臣会合、

長野県軽井沢町で、持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合があって、
 
それで、山場の首脳会合が、6月28・29日に、
大阪市の埋立地、咲洲(大阪万博の開催場所に決まった夢洲の隣の島)で開かれることになっています。


その後、9月から11月にかけて、
 
愛媛県松山市で、労働雇用大臣会合、

岡山市で、保健大臣会合、
 
北海道で、観光大臣会合、
 
最後に外務大臣会合が開催される予定になっています。
 


参加国は?


まずG7が、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、EUですね。
 
これに加えて、G20の常設メンバーである、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコが参加します。

加えて今回は、日本からの招待国として、スペイン、シンガポール、オランダ、ベトナム、チリ、タイ、エジプト、セネガルの8カ国、

さらに、国際機関を9つ招待していて、国連、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、金融安定理事会(FSB)、世界貿易機関(WTO)、国際労働機関(ILO)、経済協力開発機構(OECD)、世界保健機関(WHO)、アジア開発銀行(ADB)がそれに当たります。

日本で開かれる首脳会合として史上最大規模、というのが、これだけ揃うとよく実感できるでしょう。



G20はいつ始まったのか


G20誕生のきっかけは、世界経済を揺るがしたリーマンショックです。

先進7カ国で構成するG7だけでは危機に陥った世界経済を支えられない、とされ、中国・インド・ロシア・ブラジルなどの新興国を加えた世界経済の話し合いの新しい枠組み、G20サミットが誕生しました。

第一回会合は2008年11月、アメリカの首都ワシントンで開かれました。

その際、G20諸国は団結して金融政策や財政政策を含めてやれることは何でもやる、という6項目に及ぶ緊急対策を打ち出し、世界的な危機の封じ込めに成功した歴史があるんです。

当時、第一回会合の時に、日本は次のG20首脳会議の開催国、議長の座を強く望んだのですが、その役割はイギリスのブラウン元首相にゆずる結果となり、今回の開催まで実に11年の歳月を要することになりました。
 

一回目のG20は大成功、その後は?


上手くいっていなくて息切れしちゃってるんですよね。

ご存知の通り、この11年の間に世界を取り巻く環境は一変しました。

世界経済のけん引役を買って出た中国がバブル経済崩壊に瀕するなど、新興国経済というのはだいたいが過熱から息切れに陥っていて、もう既に通貨危機に揺れているところも多い。

加えて、リーマンショックは労働者ら中間層の没落を加速させたので、貧困の蔓延や格差の拡大を招き、アメリカ、ヨーロッパ諸国で移民排斥や自由貿易反対を唱えるナショナリズム・ポピュリズムが台頭。

一方で、先進国と新興国のすれ違いが目立っていった。

そして、アメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領の登場もあって、G20を軸にした国際協調路線は、輝きをすっかり失った。

去年のブエノスアイレスG20首脳宣言で、長年の決まり文句だった

「保護主義と闘う」

という文言がアメリカの反対で盛り込めなかったのは、象徴的な出来事といえます。
 


G20の現状をどう捉えれば良いのか


日本も含めて、一国ではとてもアメリカに対抗できません。

そういう国がほとんどなんですが、国際協調や自由貿易を維持するか否かという点では、
20カ国は、アメリカ対残りの19カ国、という構図になっています。

一方で、アメリカやヨーロッパの金融政策の正常化は、新興国・途上国の通貨経済危機を招きかねないし、世界経済の成長鈍化や債務の膨張、急成長したIT企業の暴走、仮想通貨が招く混乱など、世界経済はリスクに事欠きません。

アルゼンチンが課題として取り上げ、日本に問題解決の下駄を預けたインフラ整備問題も含めて、G20のテーマとして、きちんと処方箋を描き、克服の道筋を付けることが、G20議長国である日本の当然の責務であり、G20の機能回復の不可欠なポイントといえます。



今G20に求められている最も重要な課題は?


繰り返しますが、最も深刻なのはアメリカ第一主義ですから、これをどう封じ込めるか、です。

トランプ大統領は二国間貿易での赤字の存在を元凶と決めつけて、鉄鋼・アルミニウム・自動車などの関税上乗せという脅しをかけて、同盟国にも二国間貿易交渉を迫る戦略に出ています。

オバマ前政権のレガシーであるTPP(環太平洋自由貿易協定)からの脱退も大きな影を落としていて、
日米で自由貿易体制の拡大を主導して、知的所有権の保護確立なども含めた市場開放を中国に迫る戦略を放棄した結果になり、
中国との制裁合戦、貿易戦争に明け暮れるようになってしまいました。

貿易戦争はハイテク技術や安全保障を含めた覇権争いに変容しつつありますので、3月1日という期限までに、米中貿易交渉が成果を上げられるかどうか、予断を許しません。


そんな中、日本は議長国として責務を果たせるのか


問題だらけのアメリカの保護主義をどう折り合いをつけられるか、これがやはり、トランプ大統領と個人的にも良好な関係を保っている安倍総理に世界が期待する最大のポイントです。

それらの期待に応えるため、安倍総理は再度のヨーロッパ歴訪ということになったと、そのように言っていいと思います。

加えて、それだけではなくて、今回のG20でのオブザーバーの大量招致にも、トランプ包囲網をできるだけ大きく強固なものにしよう、という総理の意欲が現れていると見ていいと思います。


安倍総理のヨーロッパ歴訪の成果は?


日本時間の今週木曜日未明には、オランダのルッテ首相とロッテルダムで会談しました。

外務省によると、両首脳は国際会議などの場で連携し、自由貿易の推進での協力も含め、緊密に連携していくことで一致したと言います。

その際にアメリカに誇示できるのは、2月に発効する予定の日欧EPAという構図です。

それから同じく日本時間の今朝未明ですが、イギリスでメイ首相と会談しており、
イギリスが3月末に予定しているEUからの離脱について、できるだけトラブルがないようにということで協議する一方、
イギリスの早期TPP加盟などを後押しする考えを表明した、と見られています。


議長国の日本がこれからやらなければならないこと


僕が今一番気がかりなのは、日本政府内に、G20大阪サミットの場でアメリカとの関係がぎくしゃくすることがないように、日米2国間の新たな貿易協定交渉を、それまでに大筋合意にこぎつけておきたい、とする向きが増えていることなんです。

この話は、7月の参議院議員選挙をにらむと農業での譲歩が難しいので、自動車の輸出数量規制の導入とか、為替を輸出促進目的で操作しないという為替条項を受け入れるべきだ、大幅譲歩するべきだ、という議論が勢いを増していることと表裏一体なんですね。

だけど、そんな譲歩を先にしてしまったのでは、アメリカ第一主義や保護主義の問題点をG20の場で問題にしてトランプ大統領を諭して、国際協調や自由貿易への回帰を促す、というのが難しくなりかねない。

G20という場は1対多の交渉環境を準備しやすいはずの場ですから、そのG20大阪サミットまでの間の対米交渉をどうしのぐか。

そこが実は日本政府にとって我慢のしどころというか、鍵を握りそうな期間になるのかなという感じがしています。




番組HP:http://www.radionikkei.jp/fukabori/ 
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