2019/12/14 町田徹のふかぼり! ラジオNIKKEI第1 を元に作成

貿易と安全保障の火薬庫になったファーウェイ問題



僕、随分前からこの会社気になってたんですよ。

この会社、漢字で「華為技術」って書くんです。この「華」は中華人民共和国の「華」ですからね。

11年前に、のちにソフトバンクに買収されたイーモバイルという会社が、ファーウェイ製の超小型で廉価の基地局を採用することで格安料金を実現し、それを武器に新規参入しようとしている、みたいな記事を書いていて、当時から気になって仕方がなかったんです。

真相はいまだ藪の中なんですが、
ファーウェイという会社は、当時から中国のナショナリズムを想起させる社名だけではなくて、創業者が中国人民解放軍の出身だとか、中国共産党から多額の資金援助を受けているという噂が絶えなくて、

サイバー空間で中国の戦略の一翼を担っている、との見方がまことしやかにささやかれてきたんですね。
その疑問がずっと解けないんですよ。

今に至ってもファーウェイが悪いことをしているかというと、確固としたものはなくて、全部傍証ばっかりなんですよね。

なので、その疑問が解消されたとはまだ思っていないんです。

だけどその一方で、
ここ数週間、アメリカの同盟諸国が相次いで5G、次世代携帯電話サービスの開始に際してファーウェイ製品を締め出すとか、

アメリカのイラン制裁に絡んでファーウェイ創設者の娘でファーウェイ副会長兼CFO(最高財務責任者)の孟晩舟容疑者をカナダ政府が逮捕するといった事態が起きて、

まさにファーウェイは世界貿易と安全保障の火薬庫になってしまった感があるじゃないですか。

なので、今夜の「町田徹のふかぼり!」は、ファーウェイの何が脅威だと言われているのか、アメリカやその同盟国は何を考えているのか、日本政府や日本企業、我々日本人は、何に注意すべきなのか、そんなことをちょっと冷静に考えてみたいなと思ったんです。

 

今回の騒ぎの発端はCFOの逮捕


今回の騒ぎの発端は、アメリカの要請を受け、カナダ政府がファーウェイ幹部を逮捕したということでした。

カナダの裁判所は孟容疑者の保釈を認めましたが、肝心のアメリカが今後ファーウェイに制裁を科す可能性があるとみられ、事態は緊迫したままです。


ファーウェイ問題を語るにあたり、まず注意したいのは、日本のマスコミ報道の論調です。

この問題を、トランプ大統領主導の対中貿易赤字削減策の延長線上にある貿易戦争、と捉えがちなんですが、それはちょっと矮小化した捉え方だと僕は思うんですよね。

むしろ、安全保障に絡む大きな問題で、下手をすると米中間の冷戦突入や軍事的な火種になってもおかしくないほどの深刻な話だと僕は感じています。


深刻な問題だと考える根拠は


根拠は、サイバー戦争は現実に始まっているということです。 

アメリカや中国、ロシア、北朝鮮の軍とか諜報機関の間で日常茶飯事のように繰り広げられているものなんですね。

安倍政権はちゃんと公表していませんが、日本もかなり攻撃対象になっていて、

時には政府機関や公的企業が5分に1回ぐらいの割合でサイバーアタックを受け続けたかと思うと、突然、中国や北朝鮮の軍隊が休暇となる両国の祝祭日にその種の攻撃がピタッと止んじゃう。

なので、向こうは日本の政府機関を標的にして演習をやってるんじゃないかなんて言われているんですよね。



ファーウェイは中国のサイバー戦略を有利に進める武器のような存在?


少なくともアメリカはそう思っていますよね。

アメリカは、携帯電話の基地局で高いシェアを持つ企業がないのに対して、中国にはそれがある、というのが大きい。

日本経済新聞の調査でも、
2017年にファーウェイは世界シェア27.9%でトップ。2位がスウェーデンのエリクソン、3位はフィンランドのノキア。以下も、中国ZTE、韓国サムスン電子、日本のNEC、富士通が続いていて、

アメリカ勢が存在感を示す隙間は全くないんですよね。



そもそも、ファーウェイはどんな歴史を持った会社なのか

 
ファーウェイは、人民解放軍出身で元CEOの任正非氏が、人民解放軍時代の仲間たちと組んで1987年に設立した会社で、本社は深センにあります。

携帯電話の基地局やスマホ、タブレットを主力に、170カ国以上で事業を展開しており、直近のスマホ出荷台数でも韓国のサムスン電子に次ぐ世界2位です。アップルはその下ですからね。

任正非氏は44歳で通信機器の卸売販売会社としてファーウェイを立ち上げたんですが、扱っていた製品の故障があまりにも多いので、自ら製造も手がけるようになったと言われています。

僕がファーウェイを知った頃は、すでに中国で1位の通信機器会社で、
ものすごい勢いで博士号を持つ通信技術者をヘッドハンティング、スカウトするだけではなくて、欧米や日本の企業と積極的に技術交流したり、
アメリカのシスコシステムズのトラブル対応が悪くて各国の通信事業者が業を煮やしていたのに対して、すぐにエンジニアがメンテナンスに駆けつける体制を売りにして顧客を驚かせていました。

もちろん、安さも武器です。

 

その頃からアメリカとの確執があったのか


あったんです。
最初は2003年で、競争相手だったシスコシステムズがルーターの特許を侵害されたと提訴。

FBI連邦捜査局も捜査に乗り出しました。

国防総省は2011年の報告書で、ファーウェイやZTEを名指しして、人民解放軍と密接な関係がある、と指摘。

議会の諮問委員会も、ファーウェイが企業買収などで政府の後押しを受けている、と批判もしてきました。


2012年になると、下院委員会がファーウェイやZTEに対する調査を行い、ファーウェイ製品を扱わないように勧告。

2015年、当時のオバマ大統領が首脳会談で、サイバー攻撃をやめなければ制裁を科す、と中国の習近平国家主席に詰め寄る場面もありました。

で、今年の8月になってトランプ政権は、ファーウェイやZTEの製品を政府調達から排除すると決めたと。
これはだから、単に赤字削減で思いつき、というよりは、ずっとアメリカがやっているっていう話ですよね。
 


ついに本格的なファーウェイ排除に


水曜日に、議会の上院の司法委員会で、またこの件に対するヒアリングがあったのですが、そのヒアリングに際してグラスリー委員長は、

国際的な知的財産権侵害の50〜80%は中国の仕業だ、と、
アメリカへのサイバー攻撃で見れば、経済スパイの9割以上は中国だ、と、
名指しで中国とファーウェイを批判しているんですよね。

でもこの事件がそうだというのはないんですよね。



アメリカがファーウェイを目の敵にする何か大きな要因があるのでは


そこなんだと僕も思います。
というのは、GAFAなどのIT企業の隆盛とか、各種の動画・音楽配信などでのアメリカ企業の優勢ってすごいんだけども、

ここへきて急速にアリババとかテンセントといった中国勢が台頭してきている。

そんな中で、次世代5Gの国内ネットワーク整備でアメリカは中国にものすごく出遅れているんです。

ということは、中国勢が中国国内の5Gネットワークを使ってサービス開発で先行して、アメリカ勢が太刀打ちできなくなってしまうおそれがある。

その新サービスの中には、AIだったり自動運転だったりライドシェア、ドローン、クラウドなんかも全部入ってくるはずで、これってアメリカの産業競争力がガタッと落ちることになりかねないじゃないですか。

つまり、次世代の先端分野全体の覇権争いが影を落としていると。

加えて、安全保障・軍事面の懸念もあるということですね。


世界各国の反応は


オーストラリア、ニュージーランド両政府とイギリスの大手通信事業者ブリティッシュテレコムがアメリカに同調。

この夏以降、5Gで中国製品を締め出す方針を次々に打ち出しています。


日本の携帯電話各社は政府のガイドラインに沿って5Gで中国製品を使わない方針


これはこれでいいと思うんです。

というのは、
現実に中国からのサイバー攻撃が後を絶たない上、

中国企業は国内法で、中国政府の求める情報を提供しなければならない、というふうに定められている立場にありますから。

さらに、専門家の中に、
ファーウェイ製品には仕様書にないポート(通信の入り口)が見つかった例があって、要人がどこで誰とやりとりしているのか特定できるし、その組織のネットワーク上を流れるあらゆる重要情報を不正に取得できる、
と懸念している人もいる。

なので、日本企業としては、日本政府のガイドラインに従わないという選択肢はないんだろうと僕も思います。



政府のガイドラインに従えば日本は万全と言えるか?


そこが不安が残るという話だと思うんです。

現状はアメリカからの情報を鵜呑みにしているだけですから。

イラク戦争で、戦争の大義名分だった大量破壊兵器の存在が確認できなかったというような例もありますし、
過去の日米間の経済貿易摩擦では、日本は何度もアメリカの理不尽な要求に辛酸を舐めてきた現実があったということも思い起こしてみるべきでしょう。

なので、サイバー防衛力を高めて、どういうアタックにさらされて、どういう状況になっているのかを、アメリカ政府頼みではなくて、自らの目で見定めた上で、国益や企業、日本人の利益を守る方策を講じる努力が欠かせない、と思います。





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