2019/01/04 町田徹のふかぼり! ラジオNIKKEI第1 を元に作成

2019年の日本経済の行方を左右する5つのキーワード



5つのキーワードは、「米中対立」「消費増税」「携帯電話料金」「外国人労働者」そして「メガ貿易協定」です。

 

キーワード1「米中対立」


去年はアメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領に世界が振り回された一年でした。

貿易面では昨年1月、トランプ大統領はTPP離脱の大統領令に署名。
日米が多国間の自由貿易体制の拡大をリードして中国に市場開放を迫る戦略を放棄してしまいました。

3月以降も、鉄鋼やアルミニウム、自動車への関税上乗せを盾に、二国間交渉で同盟国にまで譲歩を迫る恫喝外交を繰り広げました。


去年一番エスカレートした問題といえば、ハイテク技術分野に飛び火した米中貿易戦争。

習近平国家主席の看板戦略「中国製造2025」を標的にしたトランプ大統領のアメリカ第一主義が、古くから中国の技術覇権主義に危機感を抱いていた議会や国防総省と結びつき、国際的にファーウェイなどの中国製品を締め出すなど、泥沼化しています。


米中の関係は、経済分野にとどまらないリスクが出てきています。

そのきっかけはトランプ大統領が署名、成立した「アジア再保証推進法」なんですが、
台湾への貿易装備品の売却推進や、南シナ海での航行の自由作戦の定期的な実行を明記しています。

トランプ大統領としてみれば、貿易交渉のプレッシャーに使ったつもりなのでしょうが、
12月上旬の上院での法案採決では与党の共和党だけでなく、野党の民主党も含む全議員が賛成に回った経緯があり、ワシントンが反中国一色になりました。

もちろん中国は苛立ちを強めていて、習近平国家主席は水曜日に、北京で台湾問題について演説。

「平和統一を目指すのが基本だ」としつつも、外部の干渉に対して武力行使を放棄することはしない、などと強調。
名指しこそしなかったがアメリカに圧力を控えるよう警告しました。

米中の対立は今年も深まりそうですので、これまで以上にその行方は見守る必要があると思います。

加えて、
アメリカの金融政策の正常化や、アメリカ経済の成長減速が世界経済を揺るがすリスクもあるので、アメリカについてはこの番組できっちりフォローしていきたいと思っています。



キーワード2「消費増税」


リーマンショック級の危機に見舞われない限り、今年10月に消費増税が行われます。

前回2014年4月の消費増税の際に経済が腰折れする局面があったことから、流通業界を中心に一定のマイナス懸念がある、という声が聞かれるのは事実です。 

だけれども、今回は前回の轍を踏まないよう、2019年度予算案に増税対策をこってり盛り込んでいます。

その規模は、消費増税に伴う税収の増加が5.7兆円しかないのに、
軽減税率導入や幼児教育の無償化、診療報酬補助といった恒久的な歳出増と、ポイント還元や住宅自動車減税といった短期的な増税の影響緩和策を合わせて6.6兆円もばらまき、
その収支がマイナス0.9兆円になる、という手厚いばらまきですから、

この点勘案すれば、今回の増税が今年の経済の足を引っ張るとはちょっと考えにくいですよね。


これは懸念がないということではなく、先送っているという問題だと思っていて、

懸念すべきは、例えば中小の小売店でキャッシュレス決済した時のポイントの還元率。
これが5%と、増税分の2%を上回りますよね。

そうすると、来年以降買うより今年買っちゃった方が得だということで、需要を先食いするおそれがありますから、来年以降が心配ですよね。

それから今回の増税対策のばらまきって、ほとんど与党の夏の参議院選対策の色彩が濃いので、
放漫財政をあらためられない政治風土が温存されたことが将来に大きな影を落としていると思います。



キーワード3「携帯電話料金」


情報通信白書によると、移動電話の通信料が2017年に10万250円と、初めて10万円を突破しました。

固定電話と合わせた電話通信料の消費支出に占める割合は前年より0.04%上昇。
我々の暮らしを圧迫する大きな要因の一つになっています。


そんな中、菅官房長官の「携帯電話料金を4割引き下げ」発言がありました。

携帯電話料金の引き下げの直接的な効果が期待されるのが、この政府の規制強化を盾にした事業者への値下げ圧力でしょう。

すでにNTTドコモが今年の春から自社の収益を削ってでも携帯電話料金を2〜4割引き下げる方針を表明しており、KDDIとソフトバンクも追随せざるを得ないのではないでしょうか。


携帯電話に関しては、
10月から楽天が三社の寡占市場だった携帯電話事業に新規参入することも話題ですよね。

初期投資の資金の調達に窮している節が楽天にありますので、期待されるほど料金競争できるかどうかはわかりませんが、
一方で、
楽天は電子商取引の大手でもあってポイント制に力を入れてきていますので、

例えば貯めたポイントを携帯電話料金の支払いに充当できるとか、楽天ポイントと絡めたいろんな新しいサービスを出してくる可能性はあります。


あとは最後になりますが、
現行の第4世代携帯電話に比べて通信速度が100倍早くなる新サービス、5G(第5時代携帯サービス)の商用化が、当初見込まれていたオリンピック前、来年の初夏ではなくて、もっと前倒しになりそうな可能性が出ていることも、お祭り騒ぎを呼ぶかもしれない。

こういった分野で値下げとか新たなサービスが我々の暮らしを明るくしてくれると期待したいところですね。



キーワード4「外国人労働者」


昨年暮れに成立した改正入管法が4月に施行され、今年から外国人労働者が次第に増えて、私たちの働く現場や身近な生活の場が国際色豊かなものに変わっていく、転機の年になりそうです。


農業や介護、造船など14業種で、5年後に145万人の労働力不足が予想されているので、ロボットとかAIの活用範囲を広げるだけではおぼつかないんですね。

なので、外国人労働者の力を借りないと、産業を支える労働力も、行政サービスコストを分担する納税者も、消費市場の規模を支えてくれる消費者も足りない、というのが実情だと思います。


ただ、欧米では移民に対する軋轢が増しています。

欧米の実情を見ていると、コミュニティに溶け込んでもらうことが一番大切だと言えるんだと思うんです。

医療・福祉などの住民サービスを提供するだけではなくて、コミュニティの慣行をよく知ってもらう機会を与えるとか、外国人労働者の指定の教育支援なんかも欠かせないでしょう。

とにかく周りにいる我々日本人が、彼らの定着に協力を惜しまない、ということも必要になってくると思います。

 

キーワード5「メガ貿易協定」


TPPが今週日曜日に発効したのに続いて、来月1日にはEUとのEPA(経済連携協定)も発効します。

私たちの生活への効果は大きいと思います。牛肉とかワインとか、輸入品の嬉しい値下げが相次ぎそうですよね。


ただ、今回のTPPはアメリカ抜きということなので、それはなんとか早く復帰させたいですね。

なので、TPPの加盟に意欲的な国との拡大交渉を急ぐだけではなくて、RCEPなんかの交渉加速も重要だと思います。


国内的な懸念材料として気になっていることがあって、

政府部内に、1月中にも交渉が始まるアメリカとの二国間貿易協定交渉を、6月に大阪で開催されるG20までに合意する必要があるとして、大幅な譲歩をして自動車の輸出総量規制とか為替条項を受け入れる、という意見が結構強いと聞いているんですね。

だけどこれって要するに、今年の夏の参議院選挙前に農業分野で譲歩したくないから自動車を差し出す、という政府与党の本音が丸見えでしょ。

そういう党利党略のためにアメリカのTPP復帰不要論を勢いづかせるような譲歩をするのは、日本の国益に反する行為だと僕は思います。





番組HP:http://www.radionikkei.jp/fukabori/ 
「町田徹のふかぼり!」ポッドキャスト書き起こし

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