2019/02/15 町田徹のふかぼり! ラジオNIKKEI第1 を元に作成

海賊版サイト問題、政府が介入するから解決策が見えなくなる!



文化庁が、水曜に開いた著作権分科会 法制・基本問題小委員会で、
6項目に関する法改正の方向性を了承し、今国会で著作権法改正案を提出する方針を固めました。

今回のふかぼり、タイトルは過激かもしれませんが、今回の海賊版サイト対策が全然ダメだって言う気はないんですよ。

それどころか、結構前進した部分はあると思います。
特に評価すべきだと思うのは、文化庁が6項目に関する法改正の方向性を了承したことですよね。

文化庁が法改正の方向性を了承した6項目


6項目のうち特に評価したいのは、
インターネット利用者を海賊版サイトに誘導するリーチサイト、これを違法だとした点です。

現在は対象を音楽や映像に限定している、違法海賊版ダウンロードの対象も、漫画やゲームソフトを含むすべての著作物に拡大する、としました。

さらにこの二つについて、それぞれ刑事罰を課すとしたという点も評価できると思います。


評価できない項目としては、
反対意見が根強いことを理由に、より直接的な海賊版サイト対策、つまり、
海賊版サイトを閲覧できなくするサイトブロッキングを外してしまった点です。

賛否両論あると思いますが、僕は、対策が当初目指していたものより生ぬるいものになってしまった、そこが残念だと思います。


今日のタイトルを「政府が介入するから解決策が見えなくなる」としたのは、まさにこの点を意識してのことなんです。

実は、時の権力者や行政府が関与しない形さえ作れば、効果的な海賊版サイト対策を実現できる、と僕は思っています。
今日はそういった点についてお話しさせてください。

 

報告書が指摘した海賊版サイト被害の深刻さ

コンテンツ海外流通促進機構は、漫画など違法ダウンロードによる被害の実例として、
2017年10月に摘発された海賊版サイト「はるか夢の址」における1年間の被害額が、731億円にのぼったと推計しています。

また、主要な4つの海賊版サイトへの過去6ヶ月間のアクセス総数は2億件を超え、1つのサイトにおけるコミックのダウンロード総数が3000万件を超えるという報告もあるといいます。

これらは著作権者や出版社にとって看過できない規模の被害です。

被害は漫画以外にも、雑誌、写真集、文芸書、専門書といった書籍、そしてビジネスソフトやゲームといったプログラムにも広がっているんです。


そこで対策なんですが、先ほど述べたリーチサイトの違法化違法ダウンロードの対象範囲の拡大の他にも、評価できる対策があります。

1つは、利用時にユーザー認証などを行うことでシステムのタダ乗りを締め出す、アクセスコントロールの方法の強化

もう1つは、著作権の侵害をめぐる裁判において、被害者が証拠を円滑に収集できる仕組みの導入といった、著作権者の権利保護策が盛り込まれており、
こういった点は評価に値すると思います。


サイトブロッキングを外した点は評価できない


リーチサイトの規制が海賊版サイトに誘導する手段を規制しようというものなのに対して、

サイトブロッキングは、ずばり、海賊版サイトを見られなくしてしまえ、という対策ですから、こちらの方がかなり高い効果が期待できるはずですよね。

ちなみに、サイトブロッキングが大きな注目を浴びたのは、
昨年4月13日開催の、政府の知的財産戦略本部犯罪対策閣僚会議で、
法整備が行われるまでの臨時かつ緊急の措置として、問題視されていた海賊版サイトとみなされているサイトに対して、民間事業者、通信事業者なんかにサイトブロッキングを自主的に行うよう求めたときなんですね。


そこまで政府が本腰を入れていたにも関わらず、今回の見送りはハシゴを外したように見えますよね。

サイトブロッキングはユーザーの同意を得ずに通信の中身を見て、特定の通信を遮断するものなので、
一部の憲法学者やインターネットプロバイダの間から、

利用者のアクセスの常時監視につながり、憲法21条2項後段の「通信の秘密はこれを犯してはならない」の違反につながる可能性がある

という意見がかなりたくさん出て、政府は腰が引けちゃったんですね。


だけどね、
そもそも憲法でいう通信の秘密は、
通信、主に手紙とか電話の時代ですけども、一対一のコミュニケーション手段としてそういう通信が定着していた時代に、検閲や傍受などによる人権侵害を防ぐ目的で設けられたものなんです。

つまり、昨今の海賊版サイトがインターネットを使って多数の人に違法なコンテンツをダウンロードさせようとしている状態っていうのは
、一対多の、むしろ放送に性格が限りなく近い通信でしょう。

かつての通信とは別物で、憲法で秘密を保障している通信とは言えないんじゃないでしょうか。

にもかかわらず、真摯にサイトブロッキング実施のコンセンサスを作れないのは、
閣議メンバーである文部科学大臣を出している文部科学省の外局に過ぎない文化庁、
つまり、時の政府、政権が、この問題を担おうとするからに他ならない、
と僕は思います。

権力が介入するのではないか、という不信さえ払拭すればいいんだと思うんですね。



サイトブロッキングのメリット・デメリット


イギリスやオーストラリア、韓国など、世界の40以上の民主主義国でサイトブロッキングが実施されています。

そういった世界の流れがあるとはいえ、サイトブロッキングの運用を誤れば、政府による情報統制につながりかねない危うさがあります。
これは戦前の言論統制を思い出させてしまいます。

しかし、それによってコンテンツですとか著作権者の保護ができないというのもまた大きな問題です。

こういった問題、この矛盾を解決できる方法についてですが、
僕はあると思っています。

そのヒントが、以前にもこの番組でフェイクニュース対策としてもお話しした、

旧電波監理委員会、ネット版の電波監理委員会の復活にあるんだと思います。


電波監理委員会とは

電波監理委員会というのは、戦前の国家管理から電気通信を解き放つため、
GHQが1950年に、日本政府の反対を押し切って、電波三法体制の整備とあわせて設置した独立行政委員会のことで、
振興行政を行う電気通信省から、監督行政を分離したものでもありました。

で、何から独立している委員会かというと、
時の内閣から、なんです。

独立して中立な立場から電波行政という職務を行う行政機関でした。

例えばですね、
周波数を放送局に与える時に、その局の報道姿勢が時の政権に好意的かどうかを基準にするのではなくて、
中立の立場から公平な放送をするかどうかを基準にして放送に必要な周波数を割り当てるとか、

あるいはNHKの放送番組を審査する際に、
時の政権に媚びて中立性を欠いていないか、といった観点から電波行政を遂行させる狙いがあって作られた独立行政委員会だったんです。


電波監理委員会が消滅した経緯

サンフランシスコ平和条約の発効で日本が1952年4月に独立を回復しました。

日本の主権が回復するやいなや、当時の吉田茂内閣は、行政改革という名目で郵政省設置法を改正して、電波監理委員会を廃止、旧郵政省に統合。

わずか2年2ヶ月の短命で電波監理委員会は消滅してしまったんです。


政権には放送を監視したい意図がありますが、一方で、かつてのアメリカは違っていたと僕は思います。

僕が新聞記者としてワシントン特派員をしていた1990年代後半当時のことなんですが、
アメリカのFCC(連邦通信委員会)は、これが日本の電波監理委員会のモデルになった組織なんですけど、
選挙の際に全ての局の政党ごとの取り扱い時間を秒単位で調べ上げて、政治的公平が守られているかどうかを積極的に検証していました。

取材に行ったら、「こんなプログラムをPCで作ったよ」と自慢していましたから。

こうした監視活動は独立行政機関だからこその活動で、日本ではこれまでそういう政治的公平のチェックができていません。

つまり、政治がらみのフェイクニュースのチェックはもちろん、海賊版サイトの規制も荷が重いわけです。


まとめ

今やインターネットの世界では、政治的公平どころか、政治を著しく損ねるフェイクニュースや、知的財産権を犯す違法サイト、そして少年や少女などの人格権を大きく傷つける児童ポルノが氾濫しています。

そうした問題の解決のためには、今一度、ネット版の電波監理委員会を復活し、積極的に監視役番人として関与させるのが有効な措置だと、僕は思います。

もう今国会には間に合いませんが、秋か来年春の国会を目指して、ネット版の電波監理委員会の復活を検討すべきだと思いますが、
リスナーのみなさんはいかがでしょうか。






番組HP:http://www.radionikkei.jp/fukabori/ 
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